『チーズはどこへ消えた?』を読む 2

 前半からのつづきです。


3 本書の特色

(3) 象徴 - ランニング・シューズ

 ネズミも小人もランニング・シューズを履いて迷路に入ります。
 しかし、チーズ・ステーションCでチーズを見つけてからは両者の習慣が異なってきます。

 まずはネズミです。

目的地につくと、ランニング・シューズを脱いで両方のひもを結び、首にかける - いつでもすぐ履けるように。(22ページ)

 これはいつでも新しい行動に移ることができるための準備で、彼らの心構えが象徴されています。

 しかし、小人は違います。チーズを発見してしばらくすると2人の日課に変化があらわれます。

毎朝、チーズ・ステーションCにつくと、腰を落ち着け、くつろいだ。ジョギング・ウェアを壁にかけ、ランニング・シューズを脱いでスリッパに履きかえる。(23ページ)

 小人たちは現状に慣れてしまい、ランニング・シューズを脱いでしまいます。これは変化が起きたときに素早く行動を起こすことが出来なくなっていることをあらわしているのでしょう。
 

「ランニング・シューズはどこにやったんだったかな?」みつけるのに ずいぶん時間がかかった。あのチーズを見つけたときに何もかも片づけてしまい、そんなものがまた必要になると思ってもいなかったのだ。(37ページ)

 チーズがたっぷりある生活に慣れてしまった2人。これでは新しいチーズを探すために、すぐさま行動を起こせるはずがありません。

 ついにチーズ・ステーションNでチーズを見つけたホーはこれまでとは違います。

ランニング・シューズを脱いで紐を結ぶと、いざというときにために首にかけた。(64ページ)

 もし変化があった時、すぐ次の行動に移せるようにという思いがホーにそうさせたのです。


(4) 勤勉

 チーズ・ステーションCでチーズを見つけたときに、ヘムは言います。

「実際、長いこと勤勉に働いたし、これをみつけるのは大変だったもの」(25ページ)

 勤勉に働いたから報われるのは当然。これが一般的な考えでしょう。

 そしてチーズがなくなったとき、小人の2人はその場にとどまり、壁に穴を開けてチーズを探そうとします。

ホーは、勤勉に働いても成果があがるとは限らないことがわかってきた。(36ページ)

 努力しても報われないのならどうすべきか。
 この物語に答えが提示されています。


(5) 自分が

 自分の意思で、自分が変わらなければという「主体性」も大切だといいます。
 チーズ・ステーションCのチーズがなくなったとき。

どうしてこんなことになったのだろう? 誰も注意してくれなかった。(29ページ)

 「他人のせい」はよくある現実逃避方法ですね。

 そしてホーの考え方に変化が訪れます。

自分が変わらなければ好転しない - そう思い知らされた。(65ページ)

 チーズ・ステーションNでチーズを再び見つけることができたホーの思いです。

 最後にホーは、ヘムにも変わってほしいと願います。

ヘムは自分で道を見いださなければならないのだ。(略)当人が自分が変わることの利点に気づくしかないのだ。(67ページ)


(6) 想像すること

 誰かのことや未来のことを想像することによって、何かの行動のきっかけになる。

スニッフとスカリーが新しいチーズをみつけ、たらふく食べているのではないかと思うこともあった。(34ページ)

 このホーの想像が、迷路に再び出かけるための原動力につながります。
 こう考えれば、必ずしも他人と自分とを比較するのが悪いことではないのだと気づかされます。

新しいチーズをみつけて味わっているところを思い描いた。できるだけ現実的で細かいところまで。(38ページ)

 その具体的な理想像を考えることが、現実とのギャップに気づかせてくれることになります。
 そして、具体的な理想であればあるほど、具体的な戦略が立てられるという副次的効果も生まれるはずです。

新しいチーズのイメージが明瞭になればなるほど、現実味をおびてきて、きっとみつかるという気がしてきた。(51ページ)

 具体的なイメージが具体的な行動につながる。
 抽象的な、そして他人が、という想像では具体的な行動の原動力にはなり得ないのでしょう。

彼は再び新しいチーズをみつけ、味わっているところを思い描いた。(61ページ)

 迷路のなかをさまよっていても、なかなかチーズは見つかりません。
 しかし、未来の自分を具体的に想像することによってそれが原動力となり、また小さなチーズのかけらをみつけることによって気力を取り戻します。


(7) 新しい行動に対する恐怖

 チーズ・ステーションCのチーズが突然なくなり、壁に穴を掘ってまでチーズを探した小人たちですが、その背後には新しい行動を起こすことへの不安があります。

もう一度迷路を走り回るのは気が進まなかった。(37ページ)

 道に迷ったり、チーズがどこにあるかが分からない。
 しかし、チーズ・ステーションCでチーズを見つけるまでは、2人ともそうしていたはずです。

 そしてヘムは、チーズを見つけられないと思い込んでいたことに気づきます。

それが恐ろしくて身動きがとれず、だめになっていたのだ。(41ページ)

 しかし、新しい「冒険」に踏み出したヘムには、これまでとは異なる感慨が沸き上がります。

進むのはなかなか困難だったが、再びチーズを探し求めるのは恐れていたほど大変ではなかった。(44ページ)

 チーズを探し回っていても見つからない日々が続きます。
 時には悪い想像も頭に浮かびます。

彼は苦笑した。恐怖のせいで悪いほうに考えるのだと思った。(49ページ)

ホーは恐怖に捕らわれていたのを悟った。新しい方向に踏み出したことで、解放されたのだ。(51ページ)

 悪い想像がさらに悪い想像を呼び込んでしまう経験は誰にでもあるはずです。
 その悪い想像を吹き払う方法は、そのことをひたすら考え続けることではなく、新しい行動を起こすことです。

自分の心の中につくりあげている恐怖のほうが、現実よりずっとひどいのだ。(57ページ)

 この恐怖に打ち勝ち、行動を起こすことが必要になります。


4 本書の「格言」

 ホーはことあるごとに「格言」を壁に書きつけます。
 そのエッセンスをまとめてみました。

  • 変わらなければ破滅することになる(40ページ)
  • 新しい方向に進めば新しいチーズを見つかる(48ページ)
  • 早く古いチーズに見切りをつければ、早く新しいチーズが見つかる(54ページ)
  • 恐怖がなかったら何をするか(42ページ)
  • 恐怖を乗り越えれば楽になる(50ページ)
  • 迷路に出てチーズを探したほうが安全(56ページ)
  • 従来通りの考え方ではチーズは見つからない(58ページ)
  • つねにチーズの匂いをかいで確認する(46ページ)
  • 小さな変化に気づくことで、将来の大きな変化に対応できる(62ページ)
  • チーズを楽しんでいる自分を想像すればそれが実現する(52ページ)
  • チーズを見つけることができて楽しむことができると分かれば、人は進路を変える(60ページ)
  • チーズと一緒に前進しそれを楽しもう!(70ページ)

 最後の格言は「チーズと一緒に前進する」というものです。
 さて、本書における「チーズ」とは何だったでしょうか?
 思い出してみてください。


 本書について

チーズはどこへ消えた?

スペンサー・ジョンソン 著
扶桑社
2000年11月30日
94ページ

  • ある集まり シカゴで
  • 物語 チーズはどこへ消えた?
  • ディスカッション その夜

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