『サピエンス全史』を読む

 世界的なベストセラーである『サピエンス全史』を読んでみました。


1 本書について

サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

ユヴァル・ノア・ハラリ 著
河出書房新社
2016年9月30日
272ページ

  • 第1部 認知革命
  • 第2部 農業革命
  • 第3部 人類の統一(第9章~第11章)

サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福

ユヴァル・ノア・ハラリ 著
河出書房新社
2016年9月30日
296ページ

  • 第3部 人類の統一(第12章、第13章)
  • 第4部 科学革命

2 内容

第1部 認知革命


第1章 唯一生き延びた人類種

  • 本書は認知革命、農業革命及び科学革命が、人類などの生き物にどのような影響を与えてきたのかという物語を綴っていく。
  • 先史時代の人類は取るに足りない動物にすぎず、環境に与える影響は微々たるもので他の動物と大差なかった。

 筆者はまず、物理学、化学、生物学という順序で地球の過去を規定し、次に「歴史」という複雑な構造体を創り上げた人間について「解説」ではなく「物語(narrative)」を語ります。

 かつて人類は単なる生物の一種でした。

(不面目な秘密)

  • これらの種を一直線の系統図に並べて考えることが多いが、じつはいくつかの人類種が同時に存在していた。

 人類にはホモ・サピエンスのほか、ホモ・ルドルフェンシスやホモ・エレクトス、ホモ・ネアンデルターレンシスなどが存在し、それらは同時代において生活していたこともあったのです。
 ですので、人類の進化図にある、原人 → 旧人 → 新人 などという移り変わりは必ずしも正確ではないのです。

(思考力の代償)

  • 人類の特徴は巨大な脳、直立二足歩行、道具の製造と使用などがある。
  • しかし巨大な頭が原因で、未発達・未熟な段階で生まれざるを得ず仲間で子育てをする必要があるがその反面、教育により社会に適応させることができた。
  • 人類は食物連鎖の頂点へあっという間に飛躍したため、生態系はそれに順応する時間を与えられなかった。

 人類は確かに取るに足りない動物でしたが、その強みは他の動物の進化のスピードをはるかに超えていたという点で、そのことが地球を支配する立場に押し上げたのですね。
 つまり、遺伝子による進化よりも、社会というシステムを進化されるほうが適応スピードが速いということです。

(調理をする動物)

  • 祖先は日常的に火を使っていたが、調理が可能になったことにより、多くの種類の食物への適応、食事時間の短縮、比較的脆弱な歯と消化器で済むようになった。

 そのため、食物を摂取するための器官のためのエネルギーを、脳の維持にまわすことが可能になったのですね。
 しかし、実際はそのエネルギーを脳にまわすという進化を遂げた人類種が、環境の変化を切り抜け、生き延びたということでしょう。

(兄弟たちはどうなったか?)

  • ネアンデルタール人などの人類は、サピエンスと「交雑」して子孫を残すことのできる時期はあったものの、その後は別の種となり、それらの種はサピエンスに「交代」することとなった。

 他の種はサピエンスに追いやられたか、大量虐殺されたかは定かではありませんが、サピエンスが移住すると先住の人類種だけでなく、他の動物種も滅び去ったことが明らかになっています。


第2章 虚構が協力を可能にした

  • 「認知革命」は、新しい思考と意思疎通の方法が登場したことである。
  • それは「言語」によるもので、柔軟であることから異なる意味を持った文をいくらでも生み出すことができる。
  • また「噂話」をすることによって、集団の中で誰が信頼できるかの情報が得られ、大きな集団の中で緊密で精緻な協力関係を築くことができる。
  • サピエンスの言語は、まったく存在しないものについての情報を伝達する能力であり、その「虚構」について「集団」で、さらに全く見知らぬ成員と語り合い協力することができる。

 言語によって虚構を共有することにより集団の大規模化につながり、さらには後に国家や帝国の誕生につながります。

(プジョー伝説)

  • チンパンジーの集団が機能するためには成員がお互いを知らなくてはならならないし、人類でも「噂話」によってまとまることのできる集団の数の上限はおよそ150である。
  • サピエンスは共通の神話、つまり虚構によりその上限を超えて都市、帝国を築くことができた。
  • かつての虚構は宗教的神話、死者の霊、精霊などだったが、現代においてもビジネスマンや法律家が奇妙奇天烈な物語を語る。
  • その物語を成員が信じることで社会が成り立っており、サピエンスはいわば二重の現実の中に暮らしている。

 現代の例としてプジョーという自動車会社が取り上げられています。 
 会社という法的擬制により物理的な世界には存在しない法人というものを人々が信じ、会社に資産を所有させることなどができます。
 つまり、原始の社会においても現代の社会においても、存在しないものを人々が信じている点で両者は同じなのです。

(ゲノムを迂回する)

  • 他の社会的動物は遺伝子によって行動が決まっていて、その変化は遺伝の突然変異や環境からの圧力でしか起こらず、それには何万年もかかる。
  • しかし、サピエンスは遺伝子ではなく、別の物語を語ることによって行動を変更し、10年、20年の間に変化を起こすことができるため、急速に変化していく問題にも集団で対処できた。

 だからこそ、まとまって一致した行動ができるサピエンスの集団が、ネアンデルタール人を駆逐できたのであり、それが生物学が歴史にその座を譲った瞬間であるといいます。
 また、見知らぬ集団をも信じることができましたが、それは古代においても長距離交易が行われていたことでわかります。
 さらに交易を円滑に行うための手段についても、のちに語られます。

(歴史と生物学)

  • 想像上の現実の多様性、そこから生じた行動パターンの多様性は「文化」の構成要素となった。
  • まとめると、歴史は人間の生物学的な特性の領域内で動くものの、この領域はとても広いので、これ以後の人類については歴史的な動きを記述する必要がある。

 筆者はこのような絶え間ない変化のことを「歴史」と呼び、歴史が生物学から独立を宣言したとします。
 身体的な変化ではなく自由にふるまいを変えられるからこそ、サピエンスは生物学における多様性以上のもの、つまり文化を綴っていくようになったのでしょう。


第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし

  • 現在でも人間の社会的、心理的な特徴の多くは、農耕以前の長い時代に形成されたといわれている。
  • しかし、その暮らしを説明するのは困難で、それはわずかな人工物しか使用していなかったことと、仮にその人工物で説明しようとしても彼らの生活の説明自体が歪んでしまうことにある。

 本書でもそうですが、よく例に挙げられているのは、お腹いっぱいになるまでたらふく食べてしまう私たちの習性でしょう。
 また、彼らの生活には多様性があり、単一の自然な生活様式など存在しなかったことも指摘されています。

(原初の豊かな社会)

  • 多様な食物、短い労働時間、感染症の少なさなどから、狩猟採集社会は「原初の豊かな社会」であるとされる。

 本書ではその頃の社会がいろいろ描写されていますが、自然にすべてを依存することで、快適で実りの多い社会様式を実践してきたと推測しています。

(口を利く死者の霊)

  • 霊的、精神生活については解明するのが難しいが、アニミズムが信じられていた。
  • 社会政治的世界も解明が困難であるが、豪華な埋葬に見られるように文化的な信念があったことがわかる。

 何らかの「思想」があったのではないかと思われますが、虚構を語る能力を身につけたサピエンスにとっては、それを駆使することは難しくなかったのでしょう。
 埋葬という習慣にしても、どのような考えのもとに、どのようなきっかけによりそのような行いが生まれたのでしょうか。

(平和か戦争か)

  • 狩猟採集社会においては戦争や暴力の度合いは、その社会ごとに様々だった。

 暴力の痕跡がみられる遺跡もあれば、そうでないものもあるようです。
 これが、社会の多様性があったという証拠かもしれません。

(沈黙の帳)

  • 古代狩猟採集民の生活の全体像を詳細に記述することはできない。

第4章 史上最も危険な種

  • サピエンスが異なる動植物からなっている大陸に人類が移住すると、その生物相に終止符を打つことになった。

 その例がオーストラリア大陸であり、動物種24種のうち23種が絶滅したとのことです。サピエンスの出現に動物のDNAが適応する時間がなかったのでしょう。
 ここでも、その行動を即時に変化させることができるサピエンスの強みが発揮されています。

(告発のとおり有罪)

  • 絶滅は気候変動が理由との説があるがそれは著しい変動ではなかったし、人類が新たに住み着くと大絶滅が起こっている。
  • サピエンスが絶滅を引き起こすことができた要因は、大型動物の妊娠期間の長さ、焼き畑農業の使用の可能性などがある。

 大型動物は頻繁に新しい子孫を生み出すことができなかった、焼き畑農業が壊滅的な環境変動を引き起こした、あるいはその両方の理由が推測されています。
 ここで、哺乳類が確実に子孫を残すための子育てという習慣が逆の作用を果たしたというのは興味深いですね。

(オオナマケモノの最後)

  • 北アメリカ大陸においては大型哺乳類47属のうち34属を、南アメリカ大陸においても60属中50属を失った。

 全長6メートルに達するオオナマケモノも絶滅の道を辿りました。

(ノアの方舟)

  • サピエンスの移住は、規模が大きな、かつ短時間での惨事をもたらした。
  • 次の惨事は農耕民が広がったことによるもので、その次は産業活動が引き起こしたものである。

 このことから、サピエンスが自然と「調和」して暮らしてきたことはないと結論付けています。
 サピエンスの地球環境を変化させる能力は、何も現代に限ったことではないようです。
 ただし、その変化のスピードが異なるだけであって。


第2部 農業革命


第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇

  • 農業革命:いくつかの動植物種の生命を操作すること
  • 農耕はさまざまな場所でもそれぞれ完全に独立した形で発生した。
  • 食料の増加は人口爆発とエリート層の誕生につながった。
  • サピエンスは小麦、稲、ジャガイモなどを栽培化したのではなく、逆にそれらに家畜化された。
  • 小麦の栽培に多くの労力を注ぎ込み、小麦畑のそばに定住せざるを得なくなったので、土地を守るために他の集団と戦いがちだった。

 農業革命が人々に対して与えた恩恵よりも弊害のほうが大きかったのですね。

(贅沢の罠)

  • 農業革命における作業の変化は段階的に変わっていったので、後戻りは不可能で農耕から手を引くことができなかった。

 それは現代でも同じで良い暮らしを求めると、がむしゃらに働くことを続けざるを得ないことになります。
 いわゆる生活レベルを一度上げると、なかなか下げられないということにもつながっていますね。

(聖なる介入)

  • 狩猟採集民が集約的な小麦栽培を始めたのは、食料供給を増やすためではなく神殿の建設と運営を支えるためだったのかもしれない。

 しかし、広い土地を歩き回って採集するよりも、一定の土地で収穫するほうが楽ではあります。
 たとえ農業という営みを開始したとしても、それは食料の確保という意味合いもあったでしょうが、目的は別なのかもしれないと問題提起しています。

(革命の犠牲者たち)

  • 動物の家畜化は選択的な狩猟とともに始まったのではないか。
  • ヒツジは世代を経るうちに、肥え、従順になり、好奇心を失った。
  • 人類が世界中に拡がると、家畜化した動物も拡がっていった。
  • 農耕社会は家畜に対して残酷だったが、家畜化の成功と個々の家畜動物の苦しみとの乖離は、我々にとって教訓となる。

 例えばウマも東ヨーロッパのある地域原産のものが世界中に拡がったとされていますが、長い時間をかけて他の動物を自然の力で変化させたのではなく、人為的な変化を促したのは間違いないようです。


第6章 神話による社会の拡大

  • 新しい農耕民の縄張りは狩猟採集民の縄張りよりもはるかに狭く、人工的だった。

 そのことが土地への執着を生み出すことになったのでしょう。
 土地の「所有」の始まりですね。

(未来に関する懸念)

  • 農耕の生産周期や不確実性により、未来に関する懸念を持たざるを得なくなった。
  • 未来を心配するストレスが、大規模な政治・社会体制の土台となり支配者やエリート層が台頭した。

 農業が暦を生み出し、その暦が未来という考え方を生み出したのでしょうか。
 そしてさらに食料の余剰が政治や学問の原動力となります。

(想像上の秩序)

  • 小さな集団で何百万年も生活していた人類には、大規模な協力を行うことができるための本能の進化のための時間がなかった。
  • しかし人類の想像力が大規模な協力のネットワークを構築させ、「協力」は想像上の秩序であり、その大半は迫害と搾取のためにあった。

 筆者は例としてハンムラビ法典とアメリカ合衆国憲法とを比較しています。両者はどちらも正しく、そして間違っていると。
 さきほどもあったように、生物学的な進化よりもはるかに早く対応ができるのが認知革命の結果です。

  • この文書に定められた神聖な原理に即して行動すれば、公正で反映する社会で安全かつ平和に暮らせることを約束している。

 それが客観的に正しいからではなく、それを信じれは効果的に協力してよりよい社会を作り出せるからだといいます。
 確かに同害報復の体制と自由と権利を謳う体制とでは極端に異なる気がしますが、それにより人々の協力を引き出せることこそが重要なのです。
 しかもハンムラビ法典では「罪刑法定主義」という、現代の刑法においても欠かせない内容です。

(真の信奉者たち)

  • 想像上の秩序は崩壊の危険を孕んでいるため、これを保護するには暴力や強制を含んだ努力をしなければならず、さらには真の信奉者も必要である。

 それは、エリート層や治安部隊が主なものだといいます。
 しかし、暴力や強制が必要であることにより、その秩序が必ずしも理論的に正しくないことが証明されていますね。

(脱出不能の監獄)

  • 想像上の秩序は、a) 物質的世界に埋め込まれている、b) 私たちの欲望を形作る、c) 共同主観的である。

 想像上の秩序は神々や自然法則による客観的実体であると主張されますが、上のような特徴があるそうです。
 その秩序により自分の生活や欲求が規定され、必ずしも物理法則などに従っているわけではありません。
 筆者はその例として、貨幣、人権、国家などを挙げていますが、それは後述されます。


第7章 書記体系の発明

  • 大規模な協力体制は、膨大な量の情報を扱い、かつ保存する必要がある。
  • 脳は容量が限られ、一定期間で消去され、数理的データなどの保存には向いていない。

 そして、脳の外で情報を保存して処理する発明が行われ、それは「書記」と呼ばれます。
 確かに「数」については、必ずしも人間の脳がその目的に沿った想像であるとは思えませんね。

(「クシム」という署名)

  • シュメール人の書記体系では粘土板に刻まれたが、不完全な書記体系であった。
  • アンデスではキープという縄に結び目を作るものだった。

 キープはもはや解読できないものになってしまいましたが、粘土板に刻まれた内容については、固有名詞と数字のみだったようです。
 つまり、その当時の社会体制に役立つ情報は、理論などではなく数字という事実であったことの証左ですね。

(官僚制の驚異)

  • メソポタミア人は楔形文字という完全な書記体系に移行したが、税の記録簿と官僚制との関係は現在も変わらない。
  • しかし、必ずしも効率的、正確なデータ処理ができなかったため、記録の保管・目録作成、記録検索のための技術が必要で、そのために筆写者・整理係・管理責任者・会計士などの職業が生まれた。

 これらの職業は生産そのものには役に立っていませんが、人間が大規模に協力するため秩序の維持などのためには欠かせないものとなります。

(数の言語)

  • このとき数学的表記の基礎が誕生し、のちに二進法の書記体系が発生した。

 二進法とはコンピューターが使うものですが、書記は人間の下働きから主人になっていると指摘されています。
 しかし二進法を書記体系に含めていいものなのでしょうか。


第8章 想像上のヒエラルキーと差別

  • 人類は大規模な協力ネットワークを維持するための生物学的本能を欠いているが、想像上の秩序と書記体系を生み出した。
  • しかし、男性・女性、白人・黒人、富者・貧者などのヒエラルキーが発生した。

 そのヒエラルキーが社会秩序の維持に貢献した面もあるといいます。
 しかし、人間の社会的な差異が「公平」とはほど遠い社会を作り出したことは否定できません。
 また現代でも人間の身体的な差異を、社会がどう扱えばいいのかさえも解決されていません。

(悪循環)

  • 集団の既得権が何世代もの間に洗練されていき、人知を超えた宇宙の究極かつ永遠の真実を反映しているなどといわれるようになる。

 たまたま形成された社会的な差異に対して、神話や理論などの裏付けがなされていき、その差異が固定化されてきたのでしょう。
 なぜなら、上位者はその維持のために必死になるでしょうから。

(アメリカ大陸における清浄)

  • ヒエラルキーは論理的・社会的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたもの。

 だれもがそれを信じていることがカギとなります。筆者もアメリカでの人種差別を例に挙げています。
 ここで論理的・社会的な説明がなされることがあっても、基盤を欠いているということが重要です。

(男女間の格差)

  • 生物学的に決まっているものと、生物学的な神話を使って正当化されているものとを、区別する必要がある。

 人間だけでなく昆虫にもオスメスの区別がありますが、人間社会における男女差別は必ずしも生物学的に導かれる区別に基づくものではありません。
 さらにその区別をどのように把握し、どのように解消するのかについても考えが及んでいませんね。

(生物学的な性別と社会的・文化的性別)

  • 男性と女性の役割・権利・義務は人間の創造による神話が定めているため、その社会次第でそれは大きく異なる。

 さらに時代によっても異なるといい、筆者はフランス王・ルイ14世と、アメリカ大統領バラク・オバマとを比較しています。

(男性のどこがそれほど優れているのか?)(筋力)(攻撃性)(家父長制の遺伝子)

  • この性別の歴史の普遍性と永続性をどのように説明したらいいのだろうか?

第3部 人類の統一


第9章 統一へ向かう世界

  • 文化は不変であり調和しているのではなく絶えず変化しており、その内部の矛盾は文化の変動力であり創造性・活力の根源である。

 ただし、注意すべきはその変化のスピードでしょう。
 中世の文化と現代の文化とでは、その移り変わりゆくさまはたいへん異なります。

(歴史は統一に向かって進み続ける)

  • 千年の視点で歴史をみるとそれは統一へと向かっている。
  • 今日、人類のほぼ全員が同一の地政学的・経済・法・科学制度を持っているし、「純正」な文化はひとつとして残っていない。

 確かに千年単位で見るとそのとおりなのですが、現在の事象は「統一」と呼べるのでしょうか?
 「均一」化ともいえるのではないでしょうか?
 「統一」は多様性が維持される可能性がありますが、「均一」はどうなのでしょう。

(グローバルなビジョン)

  • 普遍的な秩序となる可能性を持ったものが登場した。それは「貨幣」「帝国」「普遍的宗教」である。

 ここでは単なる一地域の制度ではなく「普遍的な秩序」という点が重要です。
 それは地球上のほぼどの地域でも通用するようになったものだからです。


第10章 最強の征服者、貨幣

  • 古来から、人類は他の民族や敵国の通貨を喜んで使用してきた。

 他の民族や国家を憎んだり敵視することはあっても、その貨幣はそうではありませんでした。
 まさに国境を越えた価値ということでしょう。

(物々交換の世界)

  • 社会の複雑化により、物々交換にはさまざまな弊害がみられた。

 そこで貨幣が登場したわけですが、見ず知らずの人々が大勢協力できるものでした。
 それは認知革命と同様な意味を持つと思われます。

(貝殻とダバコ)

  • 貨幣の使用は精神的な「革命」であり、それは技術の発展ではなく、人々が共有する想像の中にだけ存在する共同主観的現実に基づくだけである。

 貨幣は、交換・蓄積・運搬の3つの目的にかなっていました。
 それが貿易などグローバル化に貢献したことはいうまでもありません。

(貨幣はどのように機能するのか?)

  • 貨幣として使われた大麦には本質的な価値があるが、銀貨にはそれがない。したがって、貨幣は最も普遍的で最も効率的な相互信頼の制度である。
  • また、貨幣には政治的権威の署名があり、君主の支配権のしるしでもあった。

 そのため貨幣は経済的効果があっただけでなく、政治的権威と結びつくことになり、その権威が貨幣により保証される一面があったのでしょう。
 そして、確かに銀は衣食住とは直接関係がなく、生命の維持には全く役立たないものではあります。

(金の福音)

  • 人々は言語・規則・崇拝する神などが異なっていたが、金貨と銀貨を信頼し、そのためグローバルな交易ネットワークが実現した。
  • 貨幣は寛容性の極みであり、人間が生み出した信頼制度のうち最も効果的に人間同士の差を埋めるものである。

 仮に言葉が完全に通じなくても、お金があればなんとかなります。
 また、交易の前提条件として、戦争よりも信頼のほうが効果的で実利的であったことが挙げられるでしょう。
 筆者の本書の後半でそのことを指摘しています。

(貨幣の代償)

  • 貨幣は普遍的な転換性と普遍的な信頼性に基づいているが、私たちが信頼するのは隣人ではなく、その隣人が持っている貨幣である。

 しかし、貨幣の特性のため「地球村」を形成することができたとのことですが、人の価値や親密な関係を損なわれることも指摘されています。


第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

  • 過去の一地域の文化は帝国のそれに上書きされ、忘却の彼方に消え去った。

 人類統一への要素の2つめは「帝国」です。

(帝国とは何か)

  • 帝国は文化的多様性と領土の柔軟性、そしていくつもの民族の支配と無尽蔵の欲を持つものであり、人類の多様性が激減した要因ともなった。

 それは由来や統治形態、領土、人口によらないものであり、それは、ポルトガルやイギリスが代表的な例でしょう。

(悪の帝国)

  • 過去2500年間において帝国は世界で最も一般的で安定した政治組織であり、人類の文化的業績の相当部分が被征服民の搾取に基づくものである。

 しかし長期間継続して文化の蓄積ができたからこそ、後世に帝国の実情などが伝えられています。

(これはお前たちのためなのだ)

  • 為政者は居住者全員の利益のために支配し、帝国の存在を正当化した。

 そして「私たち」「彼ら」の区別を産み、したがって帝国はお互いに排他的な存在になったのでしょう。
 しかし、特定の信教を押し付けるなど共通化への試みとみられる政策もありますね。

(「彼ら」が「私たち」になるとき)

  • 帝国が思想・制度・規範を広めることになった。

 それらの帝国の特性が人類を統一に向かわせたといいます。

(歴史の中の善人と悪人)

  • 人類の文化は出文的には帝国主義文明の遺産である。

 筆者はその例として、イギリスとインドを取り上げています。
 インドには、民主主義・英語・鉄道網、法制度、クリケット、紅茶が根付いていますが、いまさらそれらを捨て去ることはないでしょう。

(新しいグローバル帝国)

  • 人類の大半がグローバルな帝国の中で暮らすことになり、国家は独立性を失うのではないか。

第12章 宗教という超人間的秩序

  • 社会秩序とヒエラルキーは想像上のものなので脆弱であるが、超人間的な正当性を与えるものが宗教である。
  • 宗教とは超人間的な逐次の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度である。

 人類統一への要素の3つめは「宗教」です。特に「宣教」が帝国に不可欠の貢献をしたことが指摘されています。

(神々の台頭と人類の地位)

  • 神の出現により、宗教的的世界において、他の動植物よりも人間の地位が高まった。

 アニミズムの時代はサピエンスと動植物は対等でしたが、神々にに対する信奉と引き換えに、それらに対する支配権が確立されました。
 それがのちに国家の支配権を正当化させることになります。

(偶像崇拝の恩恵)

  • 多神教は宗教的寛容を持つが、一神教はそうではない。

 筆者はその例としてカトリックとプロテスタントとの殺戮を挙げています。
 ヨーロッパの歴史を見ても、経済的な理由での争いよりも宗教的な理由での争いが目立っています。

(神は一つ)

  • 一神教の信者は宣教に熱心であり、それは至高の唯一神以外を否定するものだった。

 その宣教が帝国の拡張に資するもので、他の神の否定がその権威を高めたのでしょう。
 なぜ宣教ということを実行しなければならなかったのでしょうか。
 一神教が人間の本能に反するからではないでしょうか?

(善と悪の戦い)

  • 「悪の問題」「秩序の問題」をどう処理するのか、一神教や二元論の宗教も苦慮してきた。

 それが解決されなければ筆者のいう「超人間的な正当性」は得られなかったのだと思います。
 神という存在を納得するためには、身の回りで起こっている出来事を説明しなければなりません。

(自然の法則)

  • 世界には一神教だけでなく自然法則を重んじる宗教も見られる。

 筆者は仏教を例に挙げています。

(人間の崇拝)

  • 宗教が超人間的な秩序の信奉に基づくものであるとすれば、自由主義・共産主義・資本主義・国民主義・ナチズムについても、自然法則の宗教といえる。

 しかし、生命科学の成果がその信条を揺るがせているといいます。
 そしてこの捉え方が、本書第4部の科学革命につながっていきます。


第13章 歴史の必然と謎めいた選択

  • 交易・帝国・普遍的宗教により、サピエンスはグローバルな世界に達した。

 ここでいう交易は第2部で解説された「貨幣」と同義だと思いますが、ここでは歴史の特徴について指摘されています。

(後知恵の誤謬)

  • 歴史は「どのように」を詳述することのほかに、「なぜ」を説明することが重要で、それは出来事の因果関係を見つけることである。
  • その目的は未来を予想することではなく、私たちの前には多くの可能性があることを理解するためである。

 歴史学者としての筆者の思いが披露されています。
 そもそも未来は簡単に予想できないことも。

(盲目のクレイオ)

  • 歴史の選択は人間の利益のためになされるわけではない。

 これは人間が作り出した「神」の行いについてもいえることですね。
 人間のために神がいるのであれば、神は人間の命など奪ったりはしないでしょう。


第4部 科学革命


第14章 無知の発見と近代科学の成立

  • 1500年頃までは教育や学問に資金を割り当ててはいたが、それは既存の能力の維持だった。
  • だが過去500年間に、人類は科学研究に投資することで能力を高められると信じるようになった。

 ここで、筆者は「資源」→「研究」→「力」→「資源」→・・・のループを図示しています。
 しかし、この図のどこかに、人間の「探求心」を入れるべきだと思うのですが。

(無知な人)

  • 「近代科学」とそれまでの「知識」は、a) 公に無知を認める意志、b) 観察・数学、c) 力の獲得、の点で異なっている。

 そのため近代科学は柔軟で探求的になったといいます。
 わからないことが分かるようになることが、探求心の醸成につながったのでしょうか、それとも、人間本来の本能なのでしょうか。

(科学界の教義)

  • それまでは物語を使用していたが、近代科学では数学的な形式で提示した。

 具体的には、スコットランドにおける生命保険基金のための統計学が例として挙げられています。
 いわゆる大数の法則による年金制度です。

(知は力)

  • 知識の真価は必ずしも正しさではなく、その有用性にある。

 つまり、先ほどの図では「研究」→「力」の部分ですね。
 そして、力を得た支配者はその「力」を「資源」として投入します。

(進歩の理想)

  • 無知を自認することと、科学の発見が力につながることとが結びついたとき、真の進歩が可能となり、どんな問題も克服できると確信した。

 そのことは人々の生活について顕著だといいます。
 特に先進国といわれる国では、生活習慣病にみられるように、貧困による不健康よりも裕福による不健康で死ぬ人が多くなっています。

(ギルガメシュ・プロジェクト)

  • 人間にとって重要なのは死の問題であるが、科学の視点から見れば技術的な問題であり、それに対しては技術的な解決策がある。

 さらに、それが実現しても、「非死」であって「不死」ではないと筆者は指摘しますが、いくら技術的な解決策があるといっても現時点では解決されていない以上、それは「力」とは呼べないでしょう。
 他人と比較して健康、そして長寿であることが「力」であれば、そのとおりなのですが、それが幸せにつながるのでしょうか。
 筆者も第19章で考察しています。

(科学を気前よく援助する人々)

  • 科学は優れた倫理的、精神的な営みとは限らない。
  • 利益が見込めるからこそ、科学のための資金が援助されている。

 つまり、人が科学の優先順位を決定するのであって、発見された物事をどうするのかを決定するのは、あくまでも人間であると。
 確かに、アンモニア、原子核の分裂の例をみるまでもなく、それをどのように活用するかは人間の行いにかかっています。


第15章 科学と帝国の融合

  • イギリスは太平洋に遠征隊を派遣し、天文学、地理学、気象学、植物学、人類学の膨大なデータを持ち帰った。
  • さらに、この遠征自体が医学の発展にも寄与した。

 この章では科学と帝国と間の関係を紐解きます。

(なぜヨーロッパなのか?)

  • 科学がインドではなくヨーロッパで発展したのはなぜか?

 特にヨーロッパ帝国主義と近代科学に着目していきます。

(征服の精神構造)

  • 科学者と軍人が似たような考え方、無知を認めることや外に出て新発見を求めること求めていた。つまり科学者は知識を、軍人は富と権力を求めた。

 だからこそ、重要な軍事遠征には科学者が同行していたとのこと。
 確かに両者に相関関係があり、どちらかの強みがもう一方の強化につながるのであれば、そうしない手はありませんね。
 また、逆にお互いに目的が異なっていたため、手を取り合うことができたのかもしれません。

(空白のある地図)

  • ヨーロッパ人は、空白のある世界地図を描き始めたが、それは無知であることをはっきり認める行為だった。

 それが、中国などその他の国や時代の人々と決定的に異なっていたマインドなのでしょう。
 空白があるということは、その空白を埋めるということが前提なのですね。

(宇宙からの侵略)

  • アメリカ大陸の先住民だけでなく、ヨーロッパ以外の人々は視野が狭かったために高い代償を払うことになった。

 その点、ヨーロッパ人と異なりグローバルな視点がなかったために、近代の世界に置いて遅れをとることになったといいます。
 そのグローバルという視点が正しいかはともかく、征服欲が他の国を従えることになったのは事実ですね。

(帝国が支援した近代科学)

  • 支配する国のことをよく知るのは極めて実用的であり、帝国が自らを正当化することもできた。
  • その意味で、科学は帝国の事業に多大の貢献ができたし、逆に、帝国は科学研究に情報や保護を与えた。

 今でいう、「ウィンウィン」の関係ですね。
 繰り返しますが、両者が異なる目標(支配または知識)であったからこそ、この協力・補完関係が成立したのでしょう。


第16章 拡大するパイという資本主義のマジック

  • 資本主義の仕組みは、想像上の将来に対する信頼の上に成り立っていている。(信用(クレジット))

  この章では科学と資本主義と間の関係を紐解きます。

(拡大するパイ)

  • 科学革命による「進歩」の考え方は、「投資」という形で経済にも取り入れられた。つまり利益を生産に再投資するということ。
  • それは正義、自由、幸福は経済成長に左右されるという倫理体系となり、近代科学の影響にも影響した。

 庶民にとっては、いわゆる「ラットレース」の始まりでしょうか。
 将来のために得たせっかくの所得を、将来の幸福の追求ではなく、さらなる所得の向上のために使用するという強制的な「習慣」となっています。

(コロンブス、投資家を殺す)

  • 官僚や軍人よりも商人や銀行家が支配層となったことは、税金よりも信用を通じて資金調達がなされたということを意味する。

 筆者はオランダの発展の軌跡を例に挙げていますが、株式会社の登場も紹介されています。
 経済の発展 = 国の発展 とみなされることが決定的になった瞬間でありますが、同時に、人の幸福も同様の道をたどることになったのでしょう。

(資本の名の下に)

  • 国家の信用格付けは天然資源よりもはるかに重要となった。

 しかし、これは自由貿易が前提のものであり、かつ、軍事力をもつ帝国の存在が前提の事象です。

(自由主義というカルト)

  • 自由主義を「信じる」ことが前提。

 ここで筆者は自由主義が必ずしも正しいことではなく、認知革命の結果、自由主義という共同幻想が前提になっているにすぎないことを指摘しています。

(資本主義の地獄)

  • 成長が至高の善となる。

 ここで筆者は資本の独占、奴隷貿易などを取り上げています。
 そして、拡大を続けるパイという考え方も、地球には限られた資源しかないという厳然たる事実の前では不安を誘います。


第17章 産業の推進力

  • その結果、産業革命が起こったが、それは太陽と肉体のエネルギーだけではなくそれ以外のものを活用することによるものであった。

 工業が原材料、人力だけに頼っていた時代とはことなり、エネルギーの革命に産業が発展し続けることになったのですね。

(熱を運動に変換する)

  • 熱が運動に変換されるという気づきが重要。

 中国の火薬、イギリスの蒸気機関、そして内燃機関、電気への発展が紹介されています。
 たしかに、より大きなエネルギーを取り出すことができるようになった歴史ですが、同時に「手軽に」という点も人々に対して大きな影響を与えた点も重要でしょう。

(エネルギーの大洋)

  • 産業革命はエネルギー変換における革命だった。

 実際にモノを作るためのエネルギーだけではなく、モノのための原材料を運ぶためのエネルギーであるという側面があります。

(ベルトコンベヤー上の命)

  • 産業革命は第二次農業革命でもあり、特に動物が「大量生産」されることとなった。

 また、化学肥料の原料が貿易により大量輸入されることになったことも重要でしょう。
 本来は地元の自然循環により行われていた農業が、海外からの輸入に頼らざるを得なくなったことも資本主義発展の影響ですね。

(ショッピングの時代)

  • 資本主義により消費主義という「価値体系」が発生したが、肥満などが増加した面も忘れてはならない。

 広告により消費が発生し、これが拡大再生産につながり、さらなる消費を生む。
 筆者はこの消費主義を史上最大の宗教と称しています。
 たしかに消費が理論的正しいと証明されておらず、広告という「宣教」によって維持されていますね。


第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和

  • 自然の「変更」が行われ、人類の数は増加した。

 市場経済の影響について語られています。

(近代の時間)

  • 生活の変化のひとつが時間への考え方であるが、そのほか家族や地域が果たしてきた役割は国家や市場が担うことになった。

 たしかに現代でも、子育てや介護などに限らず、本来家族が担ってきたことを、お金を払って誰かに託すようになっています。

(家族とコミュニティの崩壊)

  • そして、国家や市場は家族やコミュニティの絆を弱め、「個人」が提唱された。

 このため、個人間の関係を明確にするため法が整備されることになったのですね。

(想像上のコミュニティ)

  • そのため「想像上のコミュニティ」が育成され、「国民」、「消費者」などがその代表である。

 いくら家族や地域のつながりが解体されたとしても、その代替となるものが必要で、それは何かに所属するという意味でもあります。

(変化しつづける近代社会)

  • これらの変化については絶え間なく流動的な状態であることが特徴である。

 常に変化し続ける社会。
 このことが、何かいつも不安な状態であることの証左でしょう。

(現代の平和)

  • 暴力が減少したのは国家の台頭のおかげである。

 現代が平和な時代であることはあまり実感されていないと指摘しています。
 しかし、現代以外に生活したことのない我々にとっては、実感することは不可能でしょう。

(帝国の撤退)

  • 国家内部はともかく、少なくとも国家間の武力紛争は減少している。

 近代以前において情報通信技術が現代と同様であったならば、毎日が戦争のように感じられたことでしょう。

(原子の平和)

  • 戦争は当たり前の出来事ではなくなつているが、真の平和とは戦争がないことだけではなく、戦争発生の見込みがないこと。

 戦争の代償が大きくなったこと、戦争で得られる利益が減少したこと、平和から得られる利益が大きくなったこと、そして戦争は悪であるという考え方が信じられるようになったことが挙げられています。


第19章 文明は人間を幸福にしたのか

  • 私たちは以前より幸せになったのだろうか?

 歴史学者がそう問い掛けることはなかったといいます。。

(幸福度を測る)

  • 幸福は客観的な条件と主観的な期待との相関関係によって決まる。

 物質的な点、家族との関係などさまざまな「測定」の方法があります。

(化学から見た幸福)

  • 幸福についての心理学知見と社会学的知見は相関関係であり、それらの要因にはそれぞれの役割がある。

 幸福の測定については無理だとしても、幸福の実感については測定することができるのでしょうか。

(人生の意義)

  • 幸福は人生の意義についての個人的な妄想を、その時々の支配的な集団的妄想に一致させること。

 たしかに、幸福が他人との対比により感じられるのであれば、主流となっている幸福と合致した幸福を感じることができるのがいいでしょう。
 しかし、筆者のいう自由主義には反しますが。

(汝自身を知れ)

  • 共通の前提は幸福とは主観的な感情であり、どう感じているか尋ねるだけでいいというもの。
  • 歴史家は社会、帝国、テクノロジーが幸せや苦しみにどのような影響を与えたかについて言及すべき。

 何が幸福なのか。幸福に影響を与えるものは何なのか。
 これは、古くは神による恩寵、現代ならば他人よりも幸福であること、などが考えられますが、いずれにしても自分個人だけでは感じられない種類のものなのでしょう。


第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ 

  • サピエンスは生物学的に定められた限界を超えて、自然選択の法則を打ち破り知的設計の法則によりつつある。

 最終章では未来について語られます。

(マウスとヒトの合成)

  • 生物工学は家畜などに古くから利用されてきたものに過ぎないが、遺伝子工学は倫理、政治、イデオロギー上の問題が多数発生している。

 遺伝子工学で可能な手段のうちほんの一部しか利用していないので、今後、この分野の発展は現代の技術が子どもだましに見えるといいます。
 たしかに、ノーベル賞を受賞した遺伝子を自由に改変する技術が確立された以上、いま以上に、過激(?)に改変が行われる可能性が高まっています。

(ネアンデルタール人の復活)

  • ネアンデルタール人の復活のプロジェクトがあるが、それよりも今後小さな変化により第二次認知革命が起こり、サピエンスを全く異なるものに変容させるかもしれない。

 自然の遺伝子変化は限定的でゆっくりとしたものでした。
 これが人為的に大きく変異させることができるとしたら、全くことなるものどころか、サピエンスの想像を超える変化が発生するのではないでしょうか。

(バイオニック生命体)

  • サイボーグ工学は人間をさまざまな装置で補強するものであるが、複数の脳を結び付けるような技術によって、人間そのものには何が起こるのか。

 これで想起されるのはSF小説などに出てくる、意識のネットへの移植でしょうか。
 これにより「アイデンティティ」と言われているものはどう変容するのでしょうか。

(別の生命)

  • 完全に非有機的な存在を作り出す方法もあるが、それは生き物なのだろうか。

 現在のAIは人間の脳を真似てプログラムされていますが、仮にそれが意識を持ったとしても、それは生命なのでしょうか。
 さらに、それは意識といえるのでしょうか。

(特異点)

  • これらの可能性がさらに加速すると、この世界の意義が一切意味を持たなくなるだろう。

 そもそも「意味」とは何なのか。なぜ生きているのか、という問いに戻ってきますね。

(フランケンシュタインの予言)

  • 科学が進もうとしている方向に影響を与えることを試みるべき。
  • 私たちの真の疑問は「何になりたいのか?」ではなく「何を望みたいのか?」である。

 最後はかなり難解な表現ですが、結局は未来に対する願望ということでしょうか?
 それとも、それとも希望が人生の究極の目標ということでしょうか?

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